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2014年2月5日水曜日

トノ細川の反原発


「このままでは反原発派が負けてしまう。細川に一本化しろ」という声がやかましい。
なるほど「原発」は都知事選の大事な争点だ。しかし、この選挙は原発をどうするかだけに限った住民投票ではない。原発だけを知事選の争点として他の問題に目をつぶれというのは無理というものである。
原発(再稼働)についての世論調査では、反対する人が過半数だとしても、それだけで知事選で多数派を作って反原発の候補者を当選させることはできる筈はない。

2日段階での有権者の関心は、『朝日新聞』によると、「景気や雇用」30%、「医療や福祉」25%、「原発やエネルギー」14%、「教育や子育て」14%、「防災対策」8%、「オリンピックへの取り組み」5%のにむけられている。『毎日新聞』では、30.6%が「景気と雇用」(前回23.0%)を挙げ、27.3%が「少子高齢化や福祉」(同26.8%)、14.7%が「原発・エネルギー問題」(同18.5%)とある。

多くの都民にとって、原発よりも「雇用」、「福祉」や子育て問題が切実な問題になっている。これをけしからんと言って、原発だけを争点にしろというのも無理というものである。



細川はというと、「防災、福祉などはどなたが知事になっても変わらない」とか(30日・日テレ討論会)、「福祉とか、防災とか、雇用とか、そうした問題は誰がトップでもあまり変わらない」(1日・ネット番組)、「子育てや介護などの問題は、原発の問題と比べれば金で解決できるものだ」(2日、銀座演説)といった調子である。
では細川の原発以外の政策は舛添とも宇都宮とも変わらない(!)というのか? 想像もつかないので彼の公式サイト「東京・殿様.comを見ると、「子どもと高齢者にやさしい先見的都市モデル」なる政策項目では、何と国家戦略特区を活用すると明言されている。国家戦略特区とは、安倍政権の言葉では「世界で一番ビジネスのしやすい環境つくり」をめざす「大胆な規制改革実現の突破口」に他ならない。例えばそこでは、労働規制に関して、ジョブ型正社員の雇用ルールの整理、企画業務型裁量労働制、フレックスタイム制の見直しなど、ブラックな働き方を制度化することが公然と狙われている。

国家戦略特区を活用し、同一労働同一賃金の実現を目指すとともに、ハローワークは、国から都へ移管し、民間の職業紹介とも合わせてきめ細かな就業支援を実現します。また医療、介護、保育、教育などの都民生活に密接に関係する既得権のしがらみを断ち、国ができなかった思い切った改革を進めます。それぞれの分野で、新しいサービスの創出と産業としての発展につなげます。

ハローワークの都への移管、民間職業紹介とのタイアップとは、ハローワークの求人情報を人材ビジネス会社に渡し、企業のリストラを支援するいわゆる労働移動支援策に棹さすものに他ならない。
「医療、介護、保育、教育など」を「新しいサービスの創出と産業としての発展につなげる」とは、これまで東京都が責任を負ってきた公共サービスを民間企業の儲けの対象にする(市場化)ことに他ならない。子育ての困難の社会的ネックとして注目されている保育所不足問題では、民間参入が、保育士の労働条件を劣悪化し、子どもたちひどい環境にぶち込んでいることが社会問題化している。それを学校教育についてまで、「既得権のしがらみを断って」公設民営学校を進めるというのだ。

あの元祖「規制改革」の小泉に押されての立候補であったのだから殿ご本人は「どなたがやっても変わりない」程度の認識しかなく、「余は承知していない」ことなのかもしれない。そこで立候補前後まで遡って調べると、細川は告示前日22日の記者会見で、「国でも都でもできなかったこともたくさんある。岩盤規制といわれる、各種既得権に阻まれてきた医療、介護、子育て、教育などの規制改革を強力に進めていきたい」とし、これが「私の最も期待されるところ」とまで言い切っている。
意味が分からなかったり、重要ではないけれど手下に言われておまけで掲げている政策ではないのだ。

2日銀座街頭演説で舛添は、「『国家戦略特区』で東京から経済を立て直す」と言い、安倍は「世界の都市間競争に勝ち、『国家戦略特区』を進めるのは舛添さんだ」と持ち上げた。しかし、この規制緩和の強化・再稼働については細川も舛添と変わらないどころか、舛添の上を行こうとしているくらいなのだから、安倍は細川に挨拶くらいしてもよいところだ。
このことに目をつぶって「脱原発の一点で一致しないのはおかしい」と宇都宮支持を切り崩そうとするのはおかしい。
宇都宮の原発以外の政策には賛成だというのなら、宇都宮票を回せとアシを引っ張るのではなく、舛添票を切り崩すためにこそ努力すべきだろう。宇都宮票が細川票に変わったところで、反原発票の総数が増えるわけではない。
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昨日この内容で文章を書いた。ところがアップした筈のものが消えて、下書きメモが出てしまった。そこで書直した。
東電前アクション!」という反原発運動のグループからまともなアピールが出された。宇都宮「選対」からは、「脱原発都知事候補に統一を呼びかける会」からの申入書に対する回答が示された。そして、今日の時点で『東京新聞』に宇都宮が舛添に続き2位につけているとの報があった。