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2012年12月19日水曜日

政権交代ある2大政党制の頓挫

またしても多数代表制(小選挙区制)効果がはっきりと発揮された選挙結果だった。
2005年小泉郵政「改革」選挙では、自民党が小選挙区47.7%(3252万票)の得票で議席の73%(219議席)を取った。2009年政権交代選挙では、民主党が小選挙区47.43%(3350万票)の得票で議席の73%(212議席)を取った。そして今回、自民党は小選挙区43%(2564万票)の得票で議席の79%(237議席)を取った。

投票率は過去最低で60%を割り込んだ。自民党の小選挙区での得票は、前回の約2730万票から約170万票減らしている。それでも大勝利である。未来の党など多くの新党が出たり、前回は立候補を控えた共産党が目一杯に立候補したことも票を散らす結果となり、自民党は破れた前回より少ない得票で勝利することができた。

そして比例区での自民党の得票率は、27.66% で前回2009年の 26.73% とさして変わりない。得票数は、約1881万票から約1662万票へと約218万票減らしている。前々回の約2589万票からすると約900万票の減少だ。他方、前回約2984万票(42%)とった民主党の得票は、約927万票(16%)と2000万票以上も激減した。両党合わせての比例区得票は、前々回の合計約69%・4690万票、前回の合計約72%・4865万票から、今回は合計約43.5%・2589万票と大きく縮小している。

これらの数から言えることは、第1に、今回の選挙結果は民主党に対する不信任であって、決して自民党に対する信認ではないことである。そして第2には、自民党と民主党の支持基盤は大規模に崩れ始めていることである。小選挙区制による「政権交代のある2大政党制」の試みは空中分解し、当分は政党再編が続く。



とはいえ勝利は勝利である。5年前、訳の分からないことを言って政権を放り投げた安倍は、早くも「ブッシュ大統領に電話しなくては」などと呟いたりしているようだが、さて今度は気合いを入れ直して暴走するのだろうか。

写真は「藤原ゆみこ&横尾哲生・邂逅Ⅳ」於Gallery PaM a, 2012年11月にて

2012年12月2日日曜日

崩落注意?!

クルマの運転はこわい。自分が十分に注意し、前後左右のクルマから顰蹙をかうような安全運転に徹していても、他の運転手がいい加減な運転をしていれば事故に巻き込まれる。そして大抵の自動車事故は赤チンに絆創膏では済まない。

「落石注意」という道路標識がある。注意して一体どのように対応すれば良いのか。人間が注意していれば落石がなくなるわけではない。岩石は人間の意志とは無関係にあるいは留まり、あるいは落下する。「注意」の如何に関わりなく落ちてくる岩石に対して考えられる合理的な対応は、この標識を見たら速度規制を無視してでもできるだけ早く走り抜けるというものだろう。

しかし、トンネルの壁や天井の崩落は自然現象ではない。米国ではニューディール期・30年代に大規模に建設された道路や橋などの維持管理・補修が不十分だったために、70年代から80年代にかけて大きな社会的損失を生んだという。日本では60年代から70年代にかけて道路橋などのインフラが拡充された。それから約半世紀たっている。この6月に国交省は、地方自治体が管理する老朽化した道路橋の「長寿命化」の取組み率は、何と全国平均で11%と報告している。

中央道の笹子トンネルが作られたのは77年である。僕は、南関東直下型地震が迫っているのにもめげずに都内に越してきたかなりアホか)ため、年に数回首都高を使う。とても走りにくい。首都高は60年代前半から作られた。素人目でも至る所にひび割れや錆が見える。この春に発表された国交省や首都高速道路会社の「有識者会議」報告によると、総延長のうち半分が30年以上経っており、未補修の損傷件数は9万6600件。1キロ当たりの損傷箇所は平均約190カ所、都心環状線では約600カ所だそうだ。

高速道路だけがこのざまなのだろうか。既存のインフラの中でも自動車業界の圧力で優遇されてきただろう道路ですらこのありさまなのだから、大地震などの防災に関するインフラはもっとお寒い状況ではないかと疑ってしまう。

ところで今度の都知事選の候補者は、原発ゼロを明確にしている一人を除いて、全員がオリンピック招致(招致運動だけで何百億とかけている)に賛成している。オリンピックの前に急いでやるべきことがないとでもいうのだろうか。どうかしている。崩れ落ちてくるのはトンネルの壁だけではないようだ。