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2010年2月27日土曜日

逃げた二月



都内より寒い職場の梅も咲き、イヌフグリの楽しいブルーの花も見られるようになった。しかし、寒い。そのせいもあったのかもしれない、この二月には立て続けに体調を崩した。風邪を2回、上腹部の違和感での検査、外耳炎。本来なら治療しなくてはならない虫歯を除いてもこのざまだ。身体全体が元気を失い、老いてきていると感じてしまう。

ここまで身体の不調が続くと原因を考えてしまう。仮説は、ストレスによる免疫力の低下。この2月は年中行事として嫌なことが続く。成績付け、卒論仕上げの個別の細かな指導、そして入試。しかし、いずれもこれまでも30年近くやってきたことだ。そもそも自分はこうしたことに過敏になりすぎる、つまり向いていなかったのが、これまでは体力で乗り切ってきていただけ、つまり無理をしてこなしていただけなのかと思ったりする。

約90人が受講した授業の成績付けをした。作業班ごとの報告、2度にわたる個人報告、そして何と持ち帰りでの「試験」。この4つを総合して点数化する。チェック・ポイントは殆ど決まっているので、数をこなす苦行に耐えるだけと思いたいのだが、しかし毎年やっていて憂鬱になる。書かれたものだけで判断するためだろう、日本語の文章としての的確さ、文字が丁寧かどうかなどが気にかかってしまう。誤字や、係り結びがおかしい文章などに当たるとつい悪い印象をもってしまう。誰にも同じように適用するチェックと、個々の学生から伝わってくるメッセージに必ずある差異。この双方をどう勘案して数値化するか。嫌なことである。

今年の唯一の救いは、授業で討論に多大な時間をかけたことを肯定的経験として受け止めてくれた学生が多かったこと。

2010年2月18日木曜日

Do you mind if I smoke? Yes.


厚労省は、飲食店、ホテル、百貨店など多くの人が利用する「公共の」施設の建物内での全面禁煙実施を求める健康局長名の通知を出すことを決めたそうだ。健康増進法の03年施行を受けて同年に厚労省が出した通知では、受動喫煙防止に向けて「全面禁煙」と、喫煙区域を設ける「分煙」を併記していた。

http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/law/index_3.html

07年には目標率や実施率を掲げることを促す通知を出し、今度は全面禁煙を原則とした。

僕は反ニコチニストだが、どうもこの手のお上の指導にはこつんとくる。

いつだったか、CDG空港のバス停で、煙草を手にした前の人が振り向きざまに、Do you mind if I smoke? と聞いて来たので、僕は Yes/Noを間違えることなく、確固としてOui, desoree, Monsieur. J'ai mal a la gorge. と穏やかに話すことができた(これは突っ張らかっていた若かった頃のお話し)。厚労省は、当事者同士が「吸っても良いですか」と尋ね、「いえ一寸」とか「お構いなく」とかやり取りがこの国ではあり得ないと思い込んでいるのか、仮にそうした会話があっても「禁止されていないから喫っても良い」と居直る人がいるだろうことを予め手回し良く心配してくれているのだろうか。

厚労省の有識者検討会とやらも、受動喫煙機会の減少を「事業者の義務とすべきだ」という報告書を4月にまとめるらしい。義務化には労働安全衛生法の改正が必要になる。しかし、義務化の根拠は一体どうなるのだろうか。受動喫煙による健康への悪影響は「科学的に明らか」、肺がん、循環器疾患、妊婦の低体重児出産などのリスク上昇という程度ならば、長時間労働や深夜労働の方を何とかしろと言いたくなる。

2010年2月17日水曜日

体調が悪いと


今月に入って二度目の風邪。先週前半は頭痛をともなう風邪、12日頃ようやく抜けたと思ったら昨夕から今度は咳こむ風邪。仕方がないので横になった。眠たくて仕方ないのだが、眠りすぎると夜に眠れなくなる。そこでメモを取らなくてもよいような軽い文庫や新書を用意した。

読んだ一つが、油井大三郎『好戦の共和国アメリカ』岩波新書。400年に近い歴史を新書判にまとめたものなので、粗い素描のようではある。しかし、バランスよく書けている。何よりも僕にとっては、かの国を僕がなぜかくも嫌うのか、その訳がよく分かったのが収穫だった。
これまで僕は、身体に染み付いたような自分の嫌米意識は、わが誕生日の数日後に終日大空一杯に繰り広げられ、生まれたばかりの僕を一時として眠らせなかったという占領軍による『独立記念日』のデモンストレーションのため刷り込まれたものだと思い込んでいたのだ。

要するにアメリカ合州国という理念国家は、その初めから「自由」と「文明」の名の下に、原住民に対する殺戮につぐ殺戮を繰り返してくることによって成り立ってきた国家なのだ。対メキシコ戦争も対スペイン戦争もその延長。ジェノサイドは朝鮮戦争やベトナム戦争に始まったものではなく、この国の戦争には殆ど当たり前の付きものであるようだ。イスラエルには初めから立派なお手本があったといえる。油井さんは、彼らしく、それでも続いていたクウェーカーなどの平和運動を紹介している。しかしそれは血に塗りたくられた歴史の片隅に咲く小さな白い野の花だからこそ目立つに過ぎないようにすら見える。

あの旗についた星は髑髏そ、そして赤い縞は流された血を表している。僕の体調が良くないからだろうか、そう感じられてならない。

2010年2月16日火曜日

冬季オリンピック



ニュースをつけると必ずオリンピック報道が上ずった声で流されるようになった。

ノルディック種目など僕は嫌いではない。カーリングも歳をとっても楽しめそうで悪い感じはしない。ボブスレーだのリュージュなんて橇も若いうちにあんなことができたら楽しいだろうと思う。しかし、如何せん、どれも金持ち国のスポーツだと思わざるを得ない。まずは夏の水泳以上に設備施設にカネがかかるのだろうと思ってしまう。

ハイチ出身の女性がカナダ総督として挨拶したところで、この催しのグロテスクさがかえって際立つだけ。こう感じてしまう。金持ち国のスポーツ版G7とでも思えばよいのかもしれない。それにスポーツ版の方はG7程の実害も少ない。

2010年2月15日月曜日

ベトナムからのメール

ベトナムにいるA君と久しぶりでメールのやりとりをした:

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Aくん

今日、君からのド派手な賀正を受取った。ありがとう。なかなかこちらでなお目にかからない色取りで面白い! 切手には虎があっても、カードには酉と銭となんぞの骨のようなもの。??です。

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M先生

届いてよかったです!2週間ぐらいかかってしまいましたか・・・。 全体的に中国的な雰囲気の年賀状が多いです。まあ、「じゃあ中国っぽいって何?」と聞かれると、自分の浅はかさが露呈してしまうので、聞かないでください・・・(^_^;)

明日からは念願の自転車の旅に行ってきます。とはいっても、片道300キロメートル程度のところです。これで、道が日本並みで、自転車もそこそこなら12時間ちょっとぐらいで着くのでしょうが、デコボコ道&ボロイ自転車なので、予想がつきません。ボロイというのも、並みのボロさではありません。日本で乗っている人を見かけたことがないぐらいです。

あと、いい地図がないので、迷子に要注意です。目的地も、少し高地なので、坂道にも要注意。こわい、こわい。

しかし、ベトナムには「道は口の中にある」という諺があるようで、まあ、聞きながら行けばなんとかなるだろうと思い、気楽にいきます。元気にお会いできれば無事だったということで。

寒中伺い、ありがとうございました。 また!!
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Aくん

「道は口の中にある」は良い諺だなぁ。イタリアでバス停に立っているとよくクルマが止まって道を尋ねられたこと(*)を想い出した。
地図はgoogle Mapっていう訳にもいかないか! でもベトナムにも国土地理院に相当するものがあると思う。フランスも地図が好きな国だし。

若いうちに旅ができるということは素晴らしいことだ。一生の財産になる。うらやましい。うん、かく言うアラカンのジジイもこれからせいぜい旅をしよう。

もらったカードの「酉と銭となんぞの骨のようなもの」は、横にして見ると2010の数字を象ったものだった。うん、アタマが固くなっているようだ。

毎日、簡単でも旅日記を書くことを勧めます。出来たら写真も。では、気をつけて!!!

* バス停の前後はずっとクルマが駐車していて、ドライバーからすればバス停にいる人くらいしか車道近くにいる人はいない。それにしても一見明らかに地元の人とは見えない僕にも聞いてくるのには驚いた。そのうち僕もクルマを運転するようになって分かった。彼らはカーナビは勿論、道路地図すら持たないのがごく普通なのだ。道は人に聞けば良いという訳。運転を始めて数ヶ月後には僕もそうなった。

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M先生

甘かったです。2日半かかりました。途中、800mクラスの山もあり、とんでもない苦行でした。

途中、けっこうなベトナムの人々と話したのですが、みんなから「やめろ、やめろ」と言われました。バイク天国なんで、自転車でそんな長距離を行く人もいなくて数百人が怪訝そうな顔でこちらを見ていました。バイクがパンクした人を助けたり、電気がまったく無いのに早朝に出発して、目の解像度の限界に挑戦したりとなかなかスリリングでした。詳しくは、帰国時に。

今日は、招待されて飲みすぎました。おやすみなさい。
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A君

無事着いて良かった.Buon Ma Thuot バンメトートだっけ? 大万歳です。

毎日、簡単でも旅日記を書くこと、出来たら写真と勧めたけれど、どうでしたか。書けていなかったら今からでも書くことを勧めます。書いたものを元に、君の文才なら本にできるでしょう。そうでなくても、書くことは自らを高めてくれます。

僕はいま90人の成績付け。いつになってもこれは苦行です。君の話しを楽しみにしています。元気で!!

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M先生へ

地図を調べてくれたのですか!? バンメトートよりも、南のダラットです。花まつりや桜、フランス建築などで、観光地としてはベトナムでも上位に数えられるところです。

カメラは、かなり前にお釈迦になってしまい、記録より記憶という状況です。日記は今から書いてみます。ベトナムの方々と話すとき、いいネタができました。 最近はベトナム語で会話する機会が増えているので、とてもいい時期でした。

しかし・・。尻から火を噴きますね。真っ赤です、イタタタ・・・。
帰国したら、連絡します。

2010年2月14日日曜日

労働者協同組合法


この国でもようやく労働者協同組合(ワーカーズコープ)を支える法制が作られることになりそうだ。

協同組合というと生協(生活協同組合)がなじみ深い。しかし、これは法制上では消費生活に係わる協同組合で、「生活に必要な物資を組合員に供給する事業」を中心にするものだ。これに対して労働者協同組合は、出資者自らが労働し、かつまた経営する(これを協同労働と呼ぶ)組合。この法制化をすすめてきた「<協同労働の協同組合>法制化をめざす市民会議」によれば、「人間らしく働き続けたい」という願いをもつ仲間・市民が集い、みんなで出資して仕事をつくり出し、みんなで経営に参画し、人と地域に役立つよい仕事に取り組む協同組合。それが、「協同労働の協同組合」ということになる。

スペイン、イタリア、フランスなどラテン系の欧州では、戦前からの歴史がある。アナーキズム運動と関係があるのだろう。スペインはバスクのモンドラゴンの協同組合グループは、スペイン最大手の家電メーカー「ファゴール」を含む製造業部門から農業、消費(つまり生協)、住宅、大学を含む学校にまたがり(ないのは軍隊くらいと言われる程)、それを支える労働人民金庫(つまり銀行)、共済組合など様々な領域の150以上の協同組合からなるグループで、92年段階で年間売り上げは約4千億円にのぼるという。

日本でも既に3万人をこえる人たちが「ワーカーズ協同組合」といったような名前の協同労働の事業体を作って働いており、事業規模は年間300億円を超えているという。雇用がなければ、自分たちで雇用を作って生活しようというのは、ごく普通の発想だ。法制化によってこの事業体も法人格を取って活動できることになり、社会的認知が高まることになる。

NPOの法制があるのに、どうしてこれだけの法制が今まで作られなかったか。それは協同労働の挑戦に左翼や社会主義の匂いを嗅ぎ取った人たちが少なくなかったからだろう。ところが、今回の議連立ち上げについては、「日経」や、右派とされる「読売」が「ワーキングプア対策 労働版生協」と取上げたものの、しばしば左派寄りと叩かれる「朝日」や「毎日」は取上げなかった。「日経」に至っては一面の中央で報じている。一体どうなっているのやら、、、

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100214ATFS1300W13022010.html

http://job.yomiuri.co.jp/news/ne_08021206.htm

協同総研:労働者協同組合(ワーカーズコープ)の研究機関
http://jicr.roukyou.gr.jp/

「協同労働の協同組合」法制化をめざす市民会議
http://associated-work.jp/

2010年2月7日日曜日

女は偉い


佐野洋子さんの『シズコさん』を読んだ。数年前に書評などで取上げられていて、佐野ファンの僕は気になっていたけれど、母親との関係を書いているとあって読む気が起きなかった。自分自身のことを重苦しく考えてしまうだろうと思ったのだ。佐野さんの本はゲタゲタ笑いながら読むのが一番良い。ようやく手に取ることができるようになったのは、僕自身が対親関係について何かを吹っ切れる見通しがついたからだろう。それにしてもあれこれ考えさせられた。

シズコさんも偉いが、佐野さんも偉い。自分の脚で立っている女は皆偉い。何しろ訳の分からない「オンナだから」や「オンナのくせに」を背負って立ち、そして歩かなければならないのだから。何万人もが殺され、強姦され、十万人もの人が故郷を捨てて難民にならざるをなっている。そのなかでも水を確保し、食事をやり繰りし、子どもや年寄りの世話をしているのは女性だろう。

2010年2月5日金曜日

朝青龍


朝青龍が辞めた。本人は何やら言い訳めいたことを言っている。しかし、あの顔の表情は、本当のところまったく悪いとも反省していないことを物語っている。あそこまで傲慢では、相撲協会としても危なくて続けて居座られては困るだろう。もっとも現役引退というから、まだ何かの格好で相撲界に繋がりを持ち続けるのかもしれない。

それにしても、あの型に囚われない驚くべき柔軟さと機敏さとを次々に発揮する彼の相撲を見ることができなくなるのは、少し残念だ。こういうと職場の同僚が、「あれは小沢の陰謀だと思うんだ。それまで小沢一郎に行っていた目が、あれでザッと朝青龍に行っちゃった」という。この同僚は謀りごとが大好きな人であるだけに、実に説得的な観察だった。

2010年2月2日火曜日

国保料滞納とコレクティブ・ハウスの夢



「NHKスペシャル無縁死」を見たシングルの知人から、「私なんか歳をとったらどうなるのだろう」というメールをもらった。僕の答えは、「血縁や家族なんかより、価値観や生活スタイルが近い人、友人の方が確かな繋がりじゃあないか。コレクティブ・ハウスっていう暮らし方もある」というものだった。しかし、「国保納付率88%で最低」という報道を見て、これはやはりそんな暮らし方を選べる小金持の答えであるとつくづく思わされた。ハイチのような経験をすればコレクティブ・ホームといったものは増えるかもしれないが、僕が生きている間は無理かもしれない。

厚労省によると、08年度に保険料が払えなかった滞納世帯は2年連続で加入世帯の2割を越え、収納率も国民皆保険となった61年以降で最低だったとのこと。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010020201000618.html

2010年2月1日月曜日



「NHKスペシャル無縁死」を見た。問題把握がぼんやりしていて、以前見た「フリーター漂流」や「ワーキング・プアー」程の出来ではなかった。

少子高齢化社会がはっきりと予測できた30年前に、「家族は福祉の含み資産」なんてことを言って誤摩化していた連中が、政権交代しても未だに政治と行政のトップにいるのだから、無縁死3万2千人余というのも驚くに当たらない。しかし、自殺も警察庁まとめで昨年は3万2753人。98年以来12年連続で年間3万人を超えている。ということは、合わせると毎日180人乗った飛行機が墜落しているようなものだ。静かに黙って死んで行ってくれるのなら、何も政治問題にならない社会になっているという訳だ。

ようやく雪が少し降りそうだ。こんな晩、住まいのない人たちは一体どうやって過ごすのだろうか。